無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection) |
本の評価をするっていう事が、読者のモラルに警鐘を鳴らす作品。
死と直面した著者(罪を犯したことによって)が枯渇を潤すように止まない探求心は、知識の葦にひっかかり、 その後、自問自答の様な詩作によって自己と対峙する事で新たに自己形成していく様は、読んでいて飲み込まれそうになるほど圧巻。 著者が最後まで求めたものは、きっと枯れることのない無知の涙だったのかも。 |
永山則夫 聞こえなかった言葉 |
家裁調査官。
少年鑑別所まで赴き、そこで話をしたり、聞いたりという役のようだ。 少年法の改正により、14歳以上の少年に厳罰をくだせるようになった。 厳罰化の目的は、犯罪を減少させるためだと思われるが、厳しく処罰することが 犯罪の抑止力になると断定することはできないと感じる。 幼少の頃であれば、児童相談所なども相談の窓口となると思うが、 こういった機関が充実したり、専門家が相談役になったり、子どもたちの受け皿が 十分に社会にあることの方が、犯罪防止に役立つのではないだろうか。 永山則夫が犯罪を起こした経緯は複雑ではあるが、幼少期の人格形成に 深く寄与していることは間違いない。 家族がばらばらになることに対する心の喪失感。 生きていくことに精力を注ぐ毎日。 窃盗をし、生計を立てていくことで感じる自尊心の剥離。 4人の殺人を犯すまでに何度か犯罪をしている。 ところが、少年院送致という処分はくだされていない。 少年院に送致し、しかるべき教育をし、精神状態を快復することはできなかったのだろうか。 いろいろな考え方ができるが、少年院を出たという経歴は社会から阻害される可能性が高い。 そういったことも家裁調査官、裁判官の脳裏にあったのかもしれない。 それに、比較的軽微な犯罪では、再犯回数が多くてもそういった処分がくだせないのかもしれない。 試験観察に付されたこともあるが、試験観察に付した場合、 なんらかの職業につき、職業補導という形をとることが多いようだ。 雇用者は、善意で少年を預かることになる。 また、雇用者がこれらを逆手にとり、残業を命令したりすることもあるかもしれない。 「私が、君を雇わなければ少年院に行くことになったかもしれないんだぞ。」と。 本書を読むと、子どもをとりまく環境についてある程度理解することができる。 専門的な知識がなくとも、難解な言葉で書いていないので、こういったことを学習する という観点で読んでもいいだろう。 |