たそがれ清兵衛 [VHS] |
時代劇の真に迫ろうというスタッフの意気込みを随所に感じることができた秀作。同時に「論語を習うとどうなる?」との長女の疑問に「女にも学問は必要。学問というのは自分で考える力を身に付けるためのもんだ。自分で考えることができれば生きていける」と答えるくだりや、清兵衛が刺客を命じられる場面で「冷徹さやけもののような猛々しさが無ければ…」との断りのセリフは、江戸時代より進歩しているはずの現代が人間が生きていくうえで果たして大きな進歩をとげているのかと深く考えさせる啓示を数多く含んでいる。 |
山桜 [DVD] |
田中麗奈は 「暗いところで待ち合わせ」の印象が強く残っていて、視力障害者に見えてしまったのは私だけでしょうか。東山のセリフがなんと少ないこと。あまりにかっこよすぎなので、どうして結婚しなかったのか、やっぱりくっつくのか?とか、ついつい意地悪な見方をしてしまいました。
悪役と良い役が見た目からはっきりしていて分かり易いと言えば言えるけど、・・・。 やっぱり、たそがれ清兵衛と比べてしまって星三つになりました。 |
たそがれ清兵衛 [DVD] |
山田監督初の時代劇ということですが、気合が入りすぎた恣意的な盛り上がりやドラマチックなものも極力省かれていて淡々と幕末の田舎侍の生活や風俗が描かれていたと思います。チャンバラの場面も結構リアルだし。単なる娯楽時代劇というものではない、まじめなメッセージ性の高い映画だと思います。感受性の貧弱な人が見るとつまらない映画にしか見えないと思いますけど。 |
隠し剣 鬼の爪 [DVD] |
「武士の一分」までの一連の藤沢周平映画の中で、この「隠し剣 鬼の爪」がベストだと思う。
まずなんといっても、ヒロインの松たか子が素晴らしい。「女性の品格」という本が売れる 現代だが、このきえという女性は「品格」よりもっと大切な何かを仄かに薫らせ、愛おしい。 また永瀬正敏も良い。各作品の主人公の中でも、飛び抜けストイックで無駄な動きもなく、 田舎の小さな藩の下級武士という感じが一番する。 緒形拳も、各作品の悪役の中で最高のワルである。(最悪のというのが正しいのかな?) 監督は山田洋次でないが、「蝉しぐれ」ではとても善い人だったのでその落差が面白い。 さらに、タイトルは勇ましいが、立ち回りの時間は短くそれでいて深く印象が残るシーンだ。 後から思うと、こういう題名を付けてしまう事はリスキーだが、そうでないと見逃すほどだ。 いささか書き過ぎてしまった。 もう一度言う。松たか子のきえは邦画史の1ページを、ひそやかに飾るヒロインである。 |
漆の実のみのる国〈上〉 (文春文庫) |
藤沢さんの最晩年の作品です。
貧乏に喘ぐ上杉藩の再興を目指した藩主の物語で、全編を通して政治、経済、そしてそれに伴う権力闘争が描かれています。 どちらかというと難しい政治の話ばかりですが、読了まであっという間でした。 この中には藤沢作品に特徴だった親子や夫婦の情愛、剣での闘争シーンはほとんど見られませんが、それでいて時に登場するそうしたシーンは短い文章であっても不思議に心に響きました。特に主人公の藩主「治憲」が、壮年期になって初めて暗愚と言われ軽侮していた前藩主へのとらわれから開放され、人として善き父であった彼に格別の思いを寄せる姿は胸打たれました。 また善と悪の狭間を描くのは池波さんの得意技でしたが、藤沢さんはこの作品の中でいわば藤沢流の善でも悪でもない人々を描き切っています。 名君と忠臣が足並み揃えて当たっても藩政は結局うまく行かず、忠臣はやがて汚職で失脚し、暗君と言われた前藩主の善性を見出し、断罪された重臣の息子たちは後に許されて忠臣として藩政で活躍する。 そこには善と悪でもない人々の姿が見出せます。 主人公はやがて藩主の座を退き、そして隠居の立場から最後の改革を目指し、その結果を最後まで描くことなく物語は幕を閉じています。 そこに独特な余韻と、この後鬼籍に入った藤沢さんの万感の思いが込められているように感じました。 |
漆の実のみのる国〈下〉 (文春文庫) |
藤沢周平作品は短編を多く読んでいますが、この作品は少し他に比べ難しい。
貧乏藩・米沢藩の執政による藩政のお話しです。 いかにして藩に富をもたらし、謝金をしのぐか。 借金返済のために導き出した人材・能力・計画、 それに対する反感と現実。 重荷を背負う人間の心情もまた見所です。 男女の愛や家族愛などは殆どありません。 華美されがちな藩上部の苦悩と現実、代わりゆく時代に溺れる人物像が現れています。 難しいと感じつつも、読む内にどんどんはまっていきました。 最後まで書き終えることなく逝った、藤沢周平の遺作です。 彼の見てきた江戸時代を感じる事が出来る小説です。 |
密謀 (上巻) (新潮文庫) |
政治と業界ではなく、
「まつりごと」と「ごう」です。 直江の話しよりも、秀吉、家康の権力欲の 凄まじさを直江の口から説明させている感じです。 そして、景勝の佇まいが、藤沢調で凛とした感じを 際だたせています。 某TVの主役よりも、俄然、景勝に興味を持ちました。 個人的には、本筋ではない静四郎の話しが好きでした。 どうせ読みますので、上下巻で購入すべきです。 |