風の外側 [DVD] |
主演はモデル出身の新人、佐々木崇雄と奥田監督の次女、安藤サクラ。山口県の下関を舞台に、お嬢様の女子高生とヤクザな青年が繰り広げるビターな純愛ストーリー。
ベタで強引な展開があったり、突っ込み所もありますが、序盤はけっこう面白かった。 ただ中盤以降、在日問題が出てきてからはなんだかストーリーが散漫になってしまった印象でした。単純に、ヤクザの青年とお嬢様女子高生の恋を描いた方が面白かったような気がします。 下関(人口の5%以上が在日の方)が舞台ということで、監督のインタビューによれば在日の問題はハズセなかったようですが、なんだか無理やり在日問題を入れたような感じで少々違和感がありました。 安藤サクラは、オペラの歌唱法に果敢に挑戦していて好感。お母さんの安藤和津にソックリだけど美人じゃないだよなぁ。(苦笑) でも、なかなか演技はうまくて良かったです。大竹しのぶや寺島しのぶみたいな路線でいけばいい、この先楽しみな女優の誕生ですね。 チンピラ役の佐々木崇雄は、いい雰囲気を持っているけど今回の役には合ってない感じ。「殺気」がどうも感じられない。 北村一輝や夏木マリはさすがの存在感で、彼ら登場すると画面が引き締まります。 奥田監督の前作「長い散歩」ほど心に響くものが無かったですが、秀作と言っていいと思います。 本作では敢えて大団円を用意せず、爽やかな青春映画路線を生真面目に狙った風で、それも良し。小説や特に漫画を原作にした映画ばかりの中、オリジナル脚本で勝負している奥田監督の姿勢、心意気に頭が下がるし今後も応援したいですね。 |
天使の軍隊 |
とかくわれわれは、戦争と聞くとすぐに第二次大戦を連想し、それゆえに「大量虐殺」とか「大勢の民間人の殺傷」などを思い浮かべる。時代劇を作る映画監督さえ、昔のいくさをそういうものと思い込み、必ず悲惨なシーンを入れて描く。
しかし、そういう無差別大量殺戮型の悲惨な戦争が始まったのは、第一次大戦からであり、それ以前の戦争(著者はWar1.xと呼ぶ)は、無差別大量殺戮ではなく、戦争の期間も短く、民間人の犠牲も少なかった。第一次大戦で戦場に戦車が登場して以降、戦争は無差別大量殺戮(War2.x)になり、それはベトナム戦争まではほぼそのまま続いたが、やがて先進民主主義諸国では、そうした戦争は国民の反発が強くて遂行が困難になった。 かくして、戦争における死者を(昔のように)減らす方法はないか、という模索が始まり、その結果、精密誘導兵器や無人戦車、無人戦闘機などのロボットが戦場に登場し、やがて2020年代にWar3,xの時代が来る。 著者は現在日米で現実に開発されているのロボットを徹底的に研究し、戦争が国家から軍事用ロボットの使い手たちに「外注」される時代を描いている。 擬人化された、人の心を持ったロボットなど登場しないし、にんげんが感情移入する対象となるロボットも一切出ない。 日本の科学者が災害救助用に開発しているロボットすら軍事転用できると見破った著者の慧眼にはただただ脱帽するしかない。「日本の技術開発は軍事目的ではなく、あくまで平和利用中心で」などと論ずることは意味がない、というのだ。 戦争とは何かを議論する前提を根底から覆す、常識破りの作品としておすすめしたい。 |
中途採用捜査官 SAT、警視庁に突入せよ! |
単純にたのしい話が好きなひとにおすすめ。
わたしもそういうふうにすすめられて読みました。とにかく最後まで楽しめます。 パニック・アクションシーン満載なのに、最後はちゃんと『捜査二課』らしく、経済犯罪になるところも納得。 コメディなのに、ハラハラドキドキするのは、たぶんリアリティのせい。 著者は、本来秘密のはずの警視庁の建物の構造を徹底的に調べ上げて設計図まで描いて、庁舎内の喫茶店や食堂の名前まで全部調べて、それに基づいて描いているので、並みの警察小説とは桁違いの臨場感があります。 警察マニアのひとにもおすすめしますが、理屈っぽい社会派推理なんぞが好きな人はどうかな。 『カスタマーレビューに理屈っぽいこと書いてやろう』なんて思わなければ楽しいと思いますよ。だってこの著者の本職は『理窟屋』ではなくてエンターテナーなんですから。 もちろん、これは小説ですから、著者のメルマガの辛口?政治記事とは関係ありません(から、両者を関連付けて書評する必要はないのです)。 |