ゼロアカ道場 アポなし突撃 その2
フリッカー式 <鏡公彦にうってつけの殺人 > (講談社文庫) |
とうとうあの佐藤友哉のメフィスト賞受賞作が文庫化!
内容は、私は楽しめましたが、好き嫌いが分かれる本だと思います。 特に、トリックに論理性を求める方はご注意ください。 最後の展開には驚かされますよ。 |
灰色のダイエットコカコーラ |
タイトルからして何だか胡散臭さがプンプンするが、
これが意外と良い作品であった。 具体的には「覇王」なる漠然とした、 それでいてなんだか権力のある存在になろうとする若者の話である。 特に表題作の出来は最高で、 こういった小説は良い意味で若者にしか、 それも現代のアニメやライトノベルなどに目配せをしている者にしか書けないであろう。 「覇王」とは比喩であり、 「作家」でも「ミュージシャン」でも「クリエイター」でも何でも良いのだ。 (しかしそれをあえて「覇王」として書ききった所に佐藤の個性がある。) そしてその目標に向けて努力したり、邁進するわけではなく 文字通り夢想し、自己嫌悪に陥り、同じ所をグルグル回り、 時に恋愛や、目先の目標達成に逃げ、 結局肝心の目的には何一つ近づけないといった 現代の若者の心理を、焦燥を、上手く捕らえている秀作であると思う。 いろいろな人に是非、 読んで欲しい一作。 |
子供たち怒る怒る怒る (新潮文庫) |
デビュー作以来の佐藤友哉。
気がついたら彼は三島由紀夫賞作家になっていた。 レビューにも書いたが、デビュー作は粗削りな感じが否めず、それでいて舞城ほどの突き抜けた破天荒さを感じれずにいた。 まぁこの作家はこれからだろうなぁと思いながらしばらく放置していたんだが、世間的になかなか評価の高かった本作が文庫化されたので購入。 読んでみてまず、成長ぶりに嬉しい驚き。 特に『死体と、』と表題作は秀逸。 文章の質が上がり、突き抜け切れなかったドライブ感もしっかり自分なりのテイストを獲得し、舞城とは違う破壊性を持った純文学となっていた。 形としては短編集なんだけど、中編に限りなく近い短編集って感じで、その全ての主役はタイトルにもあるとおり「子供」。 現代社会がどれくらいスレスレでギリギリで爆発寸前の危険状態かってことを示すバロメーターとして、実は最も適しているのは「子供」だったりする。 最後の解説で陣野俊史は、本作のぶっ壊れた(じつはぶっ壊れているのでは子供ではなく大人だ、という主張を佐藤は恐らくしたいのだろうけど)「すぐれてアナーキー」と表現した。 子供って本来はアナーキズムの対極にいるはずなんだけど、どうしようもない現代社会の大人たちのせいで彼らはアナーキストにならざるを得ない、ってかアナーキーな存在になることで大人と戦う。 まぁそんな社会決して正常ではなくて、だからと言って子供たちは大人たちに従順であるべきだ何て僕は1ミリも思わないけれど、この小説をもうちょっと現実化した小説が我らが村上龍の『希望の国のエクソダス』なわけだ。 まぁ何が言いたいんだか良くわからなくなってきたけれど、要するに純文学を担えるような作家達は、そういった世の中のギリギリな現状に敏感に反応し、それを言葉=小説に還元できるわけだ。 そういう人たちを僕は尊敬する。 こんな国にもしっかり警鐘を鳴らす人はいるんだ。 |
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