大音楽 (HQCD) |
高音質で甦ることで、音像がよりリアルに立体感が再構築されている。
聴く前は、ノイズ一辺倒だったら正直ヤだな、と思っていたが、山本精一の精緻なギター、津山篤のハードなベース(他)に圧倒された。 プログレの要素もかなりあり、深みのある音を聴きこむと、計算ずくで構成されているのがよくわかる。 もちろん、パワフルなノイズを叩きつけるパンク的衝動もあり、知性と肉体が奇跡的に噛みあった傑作です。 |
石川さゆり ベスト&ベスト 津軽海峡・冬景色~天城越え |
つい最近、BSでコンサートが放映されているのを見てすごく素敵だと思い購入しましたが、CDの歌声はあまりに若すぎて別人かと思うほどでした。
悪くは全然ないですけど、今度は最近の歌声を収めた物が欲しいです。 |
波止場 [DVD] |
エリア・カザンの作品としては、やはり『欲望という名の電車』が一番素晴らしいが、それはマーロン・ブランドの魅力が最も現れているのがこの作品だからであろう。本作品では波止場のゴロツキ・テリー(ブランド)が改心(回心?)し、ギャングが支配する港湾労働者の差配組合を打破、労働者主権の労働組合を確立するであろうという希望を垣間見せるところで終わる。ラストシーン、波止場に浮き出た、ギャングどもの管理小屋から波止場へ上がってくる、いまや英雄となったテリーは、ゴルゴタの岡を登るイエスにも比すべき存在へと変わり、そのほかの多くの沖仲士たちは、「テリーを働かせない限り我々は働かない」という労働者唯一の武器「罷業」行動へと自然発生的に態度を変化させる。しかし罷業への転換は、決して自然発生的に起こったのではなく、彼等の意思として、そうしたのである。沖仲士たちは、決してゴロツキではない。エリア・カザンはそれを示そうとしている。イエスのゴルゴタへの道行きでは、イエスはゴロツキたち多くの民衆に罵詈雑言を浴びせられ、これまたゴロツキである弟子のペテロは3回も「俺はイエスなんて知らない」と叫んでしまう。カザンはペテロをも許し、ゴロツキどもも許す。
そして、今や最期のゴロツキとしてギャングたちだけが残され、沖仲士らにも無視されて取り残されることにことになるのだ。 しかし、今ゴロツキが大統領として居座り、そのゴロツキが世界を仕切る。ゴロツキが相手を「ゴロツキどもをやっつけろ」と連呼しているのだ。全ては「ビジネス」というゴロツキのみかじめのためである。そして、我々沖仲士は、そのゴロツキに阿諛追従し、真のゴロツキに堕落している。 本作品は今こそ観られるべきリアリティに溢れている。沖仲士の敗北の苦味を噛み締めるために。 |
霧の波止場 [DVD] |
映画黄金時代の傑作です。何といっても台詞が素晴らしく(脚本が詩人のジャック・プレヴェールだからでしょうね)、更にジャン・ギャバンが好いのです。江湖にお薦めします。 |
波止場日記―労働と思索 |
この日記に記されたのは50代後半の著者の1年間である。そして発表され
たのは、書かれてからおよそ10年後だ。既に何冊か本を出していた著者が必 要とした形式が日記であったというのは興味深い。また10年たって価値あり と考えて出版したというのも頷ける内容だ。およそ三分の二くらいのところ、 2月11日の記述にこういう文章が出てくる。ある根底的な疑いから日記は始 まったのだが、ここに至って手ごたえをつかんだという実感が伝わってくるようなのだ。 〈午後九時半。私の関心をとらえ、私の注意をひきつけ、私の思想を流れ出さ せるのはいったい何だろうか。判断のよろしきをえた称賛か。どうも違う。私 の理論と予感の立証か。近い。実は、もっとも持続的で効果的な刺激が生ずる のは、展開を待っている大量の原稿からである。〉 |
内田百けん ちくま日本文学全集 |
『サラサーテの盤』『冥途』『特別阿房列車』ほか、創作品の代表作とされているものはだいたい含んでいて、かついろんな年代の作品が入っているので、内田百閒を初めて手に取り、一気に全貌を知りたいという人にはおすすめ。 ただ内田百閒は、夢語り風のフィクション作者では終わらず、この本に収録されていない随筆作品にも著名なものが多々ある。また、フィクションかと思って読んだ後で、随筆集を手に取ると、この本に収録されていた幾つかの短編を発見したり、と、フィクションがシームレスに随筆に続いているようなところが底知れない。しかも、代表作と目される作品以外にも強い魅力があって、これを読むと内田百閒をもっと読みたくなってしまうかもしれない。内田百閒の全貌はやっぱりこれ一冊ではまだわからないし、わかったつもりになるのは危険だろう。 なお、「ちくま日本文学全集」シリーズは、巻末に年譜がついているのがわかりやすい。 |