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日本合唱曲全集「祝福」木下牧子作品集
演奏団体は大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団といって、凄く巧い団体です。
おなじみの東混は音大出身者オンリーのせいか、
歌い方が独唱的で、一人一人は上手でも全体のまとまりを欠いているのに対し、
この団体は他の団体とは比べ物にならないぐらいぴったりと声が揃っていて、
とても重厚で柔らかく温かい、官能的とも言えるハーモニーを作り出しています。
ハーモニーが美し過ぎるため、無伴奏合唱曲集のはずなのにモテトゥスで使われるような通奏低音が流れているように錯覚してしまいます。
木下牧子氏の作品は皆独特なハーモニーを持ち、このハーモニーに魅かれる団体が多いのですが、

同時に特定の調や音階にとらわれないハーモニーであるため、音程が非常に取りにくく、愛唱している団体は多いのに、
完全に歌い切れている団体はほとんどありません。
そんな中で、このCDは木下牧子氏の作品を扱ったCDの中では、最高級のCDと言えるでしょう。
この値段では安過ぎる位の完成度です。

このレヴューを偶然眼に留めた方は、一生に一度の出会いと思って購入してください。
これを聴かずに生涯を終えたら、それは罪なことです。
個人的に私は「祝福(混声)」「棗のうた(女声)」「ロマンチストの豚(男声)」がおすすめです。
ちなみに、他の「日本合唱曲全集」シリーズでは一人の作曲家の組曲をいくつか選んで一枚のCDにまとめているのに対し、

このCDでは木下氏の無伴奏作品を属する組曲にとらわれずに集めています。

 

木下牧子混声合唱作品集
池澤夏樹の詩集『塩の道』から抜粋された5篇の詩で構成されている『ティオの夜の旅』の第4曲目「ローラ・ビーチ」に寄せて・・・・。

とても抒情的な曲です。過去の多くの合唱曲と比較しても比類のないほどの美しいメロディーとハーモニーを持った曲です。池澤夏樹の詩は、海に関わる言葉を印象的にかつ象徴的に並べ、悠久の時の流れをゆっくりと紡ぎだしています。

自然が創り出す神秘の世界をかくも詩的に表わした池澤夏樹も素晴らしいですが、それに流れるようなメロディーを与えた木下牧子により、ハッとする美しさを持った合唱佳曲が誕生しました。ピアノ・パートがその音楽の美しさに彩りを添え、華やかさを増します。ただ、特に、大切な箇所は、ア・カペラで歌われます。このコール・ソレイユは良く歌っています。学生合唱団としては本当に一生懸命で若々しさが溢れています。

それにしてもセブンスやナインスといった複雑で上品なコード(和声)進行が本当に聴いていてもうっとりとするくらいですから、歌う人の気持ち良さはまた格別なのでしょうね。

そして、この「ローラ・ビーチ」に続く終曲「ティオの夜の旅」の圧倒的なスピード感と迫力。木下牧子のお得意の変拍子がここでも効果的に使われています。
ただ、実際、これをうまく歌いこなすのは難しいでしょうね。流石にテノールも地声が目だったり、音程が不安定だったりします。ライブ録音特有のキズもありますが、なにしろそのラストに向けての心の高まりは聴いていても惚れ惚れします。

この4曲目と5曲目の繋がりと対比が『ティオの夜の旅』の魅力を増加させています。それはこのCDでもよく理解できました。

第1曲目の厳粛な雰囲気を称え持つア・カペラの「祝福」と合わせて、この『ティオの夜の旅』が多くの人に愛されている理由がよく理解できます。
演奏の出来は、『方舟』の方が安定していますが、『ティオの夜の旅』も音源としてアマチャア合唱団のお手本になると思います。

ラストの「夢みたものは」は何回聴いてもジーンときますね、本当に名曲です。


 

祝福/木下牧子:無伴奏作品集
木下牧子という人の作品を知らなくても、一度聴けばファンになってしまうこと請け合いの名曲揃いの素晴らしいCDです。演奏のシュッツ合唱団の正確なハーモニーも作品の美しさを最大限に引き出しています。是非ともこの組合せで続編を作って欲しいものです。

 

テオ・アンゲロプロス全集 I~IV DVD-BOX IV
時間とは誰が考え出した概念かを考えた事がある人は多いはず。ほんの一瞬があなたの中では永遠でありずっとまわり続ける。現実と頭の中の現像と…。時間はたくさんのドットのつながりであり後ろに後ろに飛んでいきまた前に戻る。この映画は類まれな美しい映像と表現方法で言い表せない世界を作り出した、唯一の映画である。DVDになるのをもう十年くらい待っているがならないらしい…。

 

スティル・ライフ (中公文庫)
池澤氏は、本書の『スティル・ライフ』を、日野啓三氏の『Living Zero』というエッセー集に触発されて書いたと公言されていますが、主人公の話し相手となり、科学について語り、最終的に宇宙人として比喩される、佐々井という人物は、何やら日野啓三氏がモデルとされているような気がしました。因みに、「向う側」という単語もさり気無く作中に用いられていますが、これは日野氏のデビュー作のタイトルです。

何はともあれ、『スティル・ライフ』にせよ、『ヤー・チャイカ』にせよ、簡素な文章を用いた、何処となく懐かしく、ひっそりと静まりかえった世界観は、確かに居心地は良いですが、何か今ひとつ、筆者独自の核となるようなものが希薄であるという印象を持ちました。それでもまあ、難しい思想やら哲学やらを省いて、美しい短編映画のような世界に浸りたいという気持ちの時に、本書は文学としてその役割を果たしてくれるということは、凡そ間違いありません。

 

Coyote (コヨーテ)No.34 特集:たったひとりのアラスカ[CALL OF THE WILD]
アラスカを愛し、撮影し続け、ワタリガラスの伝説を追ってシベリアで熊に襲われて亡くなった星野道夫。
彼のトーテムポールをアラスカに立てる。
美しい森から切り出された1本の木に命が吹き込まれ、星野道夫を愛した人達に祝福されながらその手で立てられて行く。
楽しく、感動的な儀式が淡々とした筆致ににじみ出している。
彼の生涯を象徴するにふさわしいそのありかたに感動しました。

 

オン・ザ・ロード (世界文学全集 1-1) (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集1)
「路上と訳してしまっては何か大事なものが欠けてしまう…動く感じがないのだ…『オン・ザ・ロード』は『路上』をどこかへの『途上』と信じてひたすら移動を続ける若い連中の話」
と紹介の冒頭に書いていました。そのとおりのストーリーが展開します。

この本を読んでいて、頭の中に映るのは、アメリカのハイウエイ。何百キロと同じ荒涼とした景色が続く。ハンドルを握りアクセルを踏む。時間とガソリンを道端に捨てる移動。長距離トラックの運ちゃんでもないかぎり、無駄な時間だ。非生産的というか。

でも、人生をふりかえってみると、この時間が大切な記憶として刻まれてしまう(そういうことってみんなありますよね?)。

この小説も非生産的なドライブみたい。ストーリーにハリウッド映画的なドラマ性はない。しかし、ひとつひとつの挿話が胸に脳に刻まれてしまう。印象的なシーンをひとつ。

サルは身勝手なディーンとディーンの元妻メリールウといっしょにサンフランシスコに来る。三人で共同生活をしようとしたのだ。ニューヨークからの長旅でお金を使い果たしたところで、ジェーンは現妻のところに行ってしまう。

「唐突にジェーンがじゃあなと言った…「どんなロクデナシか分かった?」メリールウが言った。「どんなに寒いところだろうが置いてけぼりにしていくのよ、自分の都合で」「分かってる」もくはいいえ、東のほうを振り向いて溜息をついた」

それでも、彼らはディーンを許してしまう。なぜ許せてしまうのか。その何故?がこの小説がアメリカ人に愛されている理由ですね。

 


池澤夏樹 動画

「祝福」 札幌市立手稲東中学校



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