地獄に堕ちた勇者ども [VHS] |
ダーク・ボガードは、この作品の撮影前に言っています。「この役は魅力的ではない」そして、撮影が始まってからは、「シャーロット・ランプリングは今に大スターになる」と予言しました。 確かにもっともでした。この作品のフリードリッヒはまったく魅力的ではありません。ヘルムート・バーガーの映画だったのですから。主役には違いないものの、ベルイマン作品に常連のイングリッド・チューリンともども、おいしいところは皆バーガーが独り占め。ラストの死は哀れです。また、22才のランプリングの眼!すでに、あの眼はありました。そして、あっという間にスターに上り詰めました。ボガードの勘は見事に的中しました。 |
地獄に堕ちた勇者ども [DVD] |
The Damnedが何故この邦題になるのか。「勇者ども」には違和感を感じる。
ナチス台頭を助けたコンツェルン、見てみぬふりをした知識人たち、狂気の中で権力欲にまみれた人間の残酷さ、醜さが、The Damnedとして描かれているのだから。 ヘルムート・バーガーのデビュー作。屈折した美青年を妖しく激しく好演している。蜂蜜色の柔らかな金髪、陰影のある碧眼、絹のような肌、かよわい細身。一挙手一投足に釘付けになる。ダーク・ボガートの鬼気迫る演技は凄みがある。シャーロット・ランプリングは小鹿のよう。 冒頭から最後まで不穏感、不快感、狂気にクラクラする。製鉄所の炎と煙、夜の闇を走り抜ける車中での男達の会話、チェロを聴いたり、夕食を囲む家族のまとう「空気」。嵐の前の静けさのような。この「空気」を撮るということがすごい。大げさな仕掛けはないのに淡々と濃厚なドラマが進行する。ヴィスコンティの「神業」。 バーガーが女装で「本物の男」ソングを歌うシーンが圧巻。これだけでヴィスコンティの言いたいことが三分の二はわかってしまう。単に「退廃」ではない。屈折したセクシュアリティは、スキャンダラスな当時の政治情勢と無関係ではないことが暗示されている。マザー・ファッカーになって母を破滅させ、権力を握るという幻想でナチになるマルティン(バーガー)の姿は衝撃的だ。 ロームの虐殺のシーンは凄惨。地獄の始まりを二度と繰り返さないためにヴィスコンティは克明に描いた。権力が財界や粗暴な輩の手を借りて個人をひねりつぶすなどわけはない。ナチスでなくとも。将校が膨大な個人情報ファイルの間でほくそえむ。「この国ではみんな監視しあっている」 The Damnedは今もそこにいる。 |
地獄に堕ちた勇者ども [DVD] |
栄枯盛衰、権謀術数、眉目秀麗…巨匠ヴィスコンティの巨匠たるエッセンスがぶっこまれてますねー。
何が凄いって「またのらりくらりしてるなー」と思って観るうち、気がついたらどうしようもなく盛り上がっちゃってるところはやっぱり天才かなとか… あと綺麗な男の子たちが女装して踊った次の朝皆殺しになっちゃう虚しい装飾と侘しい汗と鮮血。 そして招かれざる客。 あと血の呪縛→歪んだ性愛→狂気ってとこかねとりあえず。 Hitler hairdoが似合ってしまうHelmut Bergerは気持ち悪いくらい綺麗ですね。裸も良いね。裸足も良いね。 序盤キャラの把握が難しかったけど、イノセント等同監督の別作品とはまた別の緊張感にみなぎってて、結構、引き摺られるようにして観た。 大体19世紀とかじゃないからね。第2次世界大戦直前ですか。重さのタイプが違うよね。 |
地獄に堕ちた勇者ども [DVD] |
なんというか「やはりビスコンティやな」っと思わせてしまう重厚さでした。ヒトラーが台頭する虚虚実実の駆け引きの流れを知っていないとこの映画の面白さは半減するかもしれません。なぜナチス同士が殺しあうのか?って途中で訳が分からなくなる人もいるでしょうから。この事件で唯一ヒトラーを「おい」って呼べた同士(突撃隊のレーム)を抹殺してしまうことになります。まあこれで誰も気兼ねする人はいなくなったわけです。ドイツ人の映画のはずが英語ですし、スウエーデンの大女優イングリッド・チューリンからイギリスのシャーロット・ランプリング(この人この手の映画よく出ますね)、青年はフランスのルノー・ベルレーでしょうか??俳優さんは盛り沢山です。ラストシーンは狂気ムンムンですね。ビスコンティはナチスを狂気と見たのでしょうか? |