黄金郷(エルドラド)伝説―スペインとイギリスの探険帝国主義 (中公新書) |
ダニエル・デフォー「ロビンソン・クルーソー」は,南海の無人島での話なので,当然,太平洋での話だと思っていた(チリ沖のファン・フェルナンデス諸島で1704〜1709年を過ごしたアレクサンダー・セルカークというイギリス人船乗りの実話がモデルとなっている)。しかし,小説は,南米・ベネズエラのオリノコ川河口が舞台であった。
デフォーは,金の有数の産地であるオリノコ川周辺のギニア地方(グアヤナ地方)をイギリスの植民地とするため,同地に多数のイギリス人の入植を誘うため,「ロビンソン・クルーソー」を書いた。 「エルドラド」とは,金で溢れかえるという伝説の王国。 スペインの将軍ケサーダは,オリノコ川周辺こそエルドラドが所在する地であると考え,1569年,エルドラドの地の終身総督及び軍務総監の地位が与えられた。 エルドラドは,その後,スペインとイギリス,イギリスとベネズエラが相争う地域となった。 が,20世紀に入ると,金鉱業はさびれた。 スティーブ・マックイーン主演「パピヨン」のモデルである,強盗犯パピヨンが収容されていたのは,エルドラド刑務所である。 本書は,ベネズエラを舞台に設定して,15世紀から現代までのエルドラドの移り変わりを,種々のエピソードを交えながら解き明かす本である。 欧米による黄金郷探検譚に興味のある方にはお勧め。 |
7つの黄金郷 <6> |
未完の大作。鉛筆描きの第四部ネームP30を含む。
欧州中が旧教徒と新教徒との戦いに巻き込まれる中、英国はスペインやバチカンと敵対していた。 英国レッドフォード家に生まれた双子の男女エロール・リーとオリビエ・リーは 4歳の頃から両親と別れ10年間船上で暮らしていた。 父侯爵から帰国の命が下り、祖国へ戻ると母ビクトリアが何ものかにさらわれ 3年の月日がたつ事を告げられる。 オリビエは4才の時に旧教徒にさらわれ背中に「EL DORADO」のイレズミが刻まれていた。 完結と謳いながら半端なネームをのっけられてあきれてましたが、読み返すとやはり面白いです。 マンスフィールド伯アーサー・ローレンスなんか、オリビエへの思いを完全に押し隠している為に かえってはちきれそうでエロい感じがします。 兄のエルでさえ、妹を他の男に預けた時には娘を持つ父親の気持ちがわかると言った ジェラシーらしきものを感じているのに、実の父レッドフォード侯爵は謎です。 アーサーに「オリビエの手当てをして自分も生身の男です。こんなムラムラした自分と あなたの娘を今夜ふたりきりにすべきではないと思う(直訳)」と告白されても 「結婚ならいつでも許す」と、父の情に流される事もなくその場を後にしてしまいました。 だいたい娘にまでフェロモン振りまいていったい何がしたいのかと。 でも、すごく楽しいです。 もしも舞台化する事があったならロレンツォ・デ・クレメンテ公爵は是非美輪明宏さんに演じて頂きたい。 |
秘境アジア骨董仕入れ旅――お宝ハンター命がけの「黄金郷」冒険記 (講談社プラスアルファ文庫) |
島津さんの本はこれで3作読みましたが、いずれも痛快で冒険心が煽られます。
骨董品というお宝を追い求めるその道のプロハンターだけあって、そんじょそこらのアマチュアな探検とはまるで違います。 それに商売を絡ませているところがユニークなところであり、野心旺盛で精力的な押しの強さが見受けられます。 海千山千あらゆる修羅場をくぐりぬけてきたツワモノだからこそ、書かれている内容に玄人肌した凄みが感じられます。 それもお宝かどうかを目利きにより瞬時に見極めなければならず、同時に心理作戦で値決め交渉を行いつつも、身の安全を確保しておくといったスパイラルな行動は実に天晴れです。 まさしく映画インディージョーンズを凌駕するほどで、しかもノンフィクションであり、地の果てまで宝を追い求める執念をものの見事に描写しています。 294ページに渡ってびっしりと書き込まれており読み応えは十分あります。 本書は、このワクワクする気持ちでもって、読者を秘められた世界にナビゲートしてくれることでしょう。 |