ヨーロッパ城物語 ノイシュヴァンシュタイン~ドイツ~1/3
ルートヴィヒ 復元完全版 デジタル・ニューマスター [DVD] |
ことさら熱演をしなくても役と俳優がぴったりはまって成功する稀な例の一つ。ヘルムート・バーガーが純粋で優しく、夢見がちなために悲劇の運命を辿った美しい王になりきっている。ほとんど演技をしているように見えないが、例えばワーグナーの不義を知った瞬間からワーグナーとコジマに相対するときの演技は、繊細な表情の変化が素晴らしい。この抑えた名演技があってこそその後のルートヴィヒの苦悩に心を揺さぶられるのだ。
ロミー・シュナイダーがとても魅力的。彼女が現れる度に思わず微笑んでしまう。こんなに笑顔の自然で明るく美しい知的で優雅で気取りのない女優はいない。ルートヴィヒを愛するがゆえに苦しみながらも身を引き、それがかえって彼の思いに火をつけまた悩むという心の揺れを好演している。ルートヴィヒと夜の乗馬に出かけ、川のほとりでキスをするシーンが美しい。哀れなゾフィー役の女優も可愛らしく、細やかな演技を見せてくれる。エリザベトとの緊迫した会話の場面が見事。脚本が素晴らしい。ありえないほどの髪の長さにも陶然となる。 ヴィスコンティはできる限り史実に忠実に、ルートヴィヒの思いに寄り添って彼の心の「真実」に迫ろうとしているのが好感がもてる。最初から同性愛だったのではなく、エリザベトへの愛がかなわず、ワーグナーには裏切られ、王族や母との心理的隔たり、腹心には王としてのありようを批判され、弟は発狂というストレスの中で、現実逃避もあって周りに美男をはべらせたり、おとぎの国のような城でファンタジーに耽ったりするようになっただけで、浪費は金に執着がないことの裏返しだった。キリスト教は彼の苦悩を和らげず、逆に罪の意識を植え付けた。「神父様、またお説教ですか」 彼は決して気弱な男ではなく、むしろ意志強固だった。「私は卑怯なのではない!」 だが一方で争いや駆け引きを嫌い、自己主張しないから誤解され、挙句には精神病のレッテルを貼られる。 静かで深い映画。絶妙な光と影、色彩の豊かさが目を楽しませてくれる。ノイシュバンシュタイン城の白鳥の湖の洞窟や、王の部屋の天井に映し出す星空、雪景色や夜の湖が幻想的。ロマンチックな王の心を映し出している。ローエングリンやトリスタンとイゾルデ、シューマンの子供の情景、そして時々挿入される不安げなピアノの短いフレーズが効果的。 「私は永遠にエニグマでありたい。自分自身にとっても」 夜の闇の底で謎の死を遂げた王の顔がエンディングにストップモーションで映し出される。たいまつの光に照らし出されたその美しい横顔に、ヴィスコンティの愛が感じられる。政治的な欲とは無縁で平和と自由と芸術を愛し、美しく純粋であろうとした王と一体化したかのようなヘルムートへの愛が。 |
ベートーヴェンの生涯 (岩波文庫) |
著者は、ベートーベンの全生涯のもくろみを「歓喜」としている。 ベートーベンは、ウィーンから良い生活が送れるように守られているわけでもなく、彼は長い期間貧しい生活をしていた。 そして耳に病気を抱え、音をうまく聞きとれないのに作曲活動を続けていたことはよく知られているが、耳だけでなく体のいたるところに病気を抱えていた。 恋愛においても、不運が付き纏い、想いを寄せていた相手と結婚ができなかった。そして「つんぼです」と言えないがために、彼は社交を避け、よりいっそう孤独に陥る。 これらの不運を見るだけでは、私たちはベートーベンから得られるものは少ない。 しかし、ここが重要な点だが、彼は「勝利者」であった。 彼はこれらの運命・悲哀に打ち勝ち、「歓喜」をつかんだ勝利者であった。 この過程をベートーベンは1つの金言により表している。 『悩みをつき抜けて歓喜に致れ!』 彼はなぜ「歓喜」をつかみたかったのか?なぜそのために曲を作ったのか? それは、貧しい人の運命を改善するためである。 つまり、ベートーベンは我々のために(つまり他人のために)勝利者となったのだ。 彼自身を見ると私たちは苦しみや敗北などしか見出すことはできない。しかし、彼は勝利者となることで、それらの苦しみを浄化してくれたのだ。 |
CasaBRUTUS特別編集 新装版・20世紀の三大巨匠 (マガジンハウスムック) |
最近、インテリアデザインが静かなブームである。ル・コルビュジェ、ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライト…。彼らはもう亡くなってしまった人ばかりだが、その作品は今も現存し、多くのファンに愛されている。
愚生も高校時代に書店でふと建築関係の本を読んでいて欲しくなり、お金が足りないので家まで小遣いを取りに行った事がある。それだけ彼らの作品は魅力的に映った。 この本は雑誌「BRUTUS」の別冊であるが、他誌が割と読みにくく、敷居が高い感じがするのに対して、この本は建築というものの敷居自体を下げて、誰でもとっつき易い、ウェルカム状態にしてある。最初は「オシャレでカッコいい」というミーハーさでも良いから、多くに人に建築というものの魅力を知る事の出来る存在であると言える。 |
ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書) |
ウィトゲンシュタインの思考の変遷をその人生にも触れながら描いていく著作。非常にコンパクトに、うまくまとまっていると思われる。ある種伝記的な色合いを持つ。
しかし問題の中心は著者自身(永井均氏)の問題に帰されるように見える。 「私」が「この私」であるのはどうしてか?単なる「独我論」に集約されない、共有されない独我論。 そのような問題を提起することに自分で言っていて矛盾を感じるが、この書はウィトゲンシュタインを通して著者永井均氏の問題を訴える書であると私は感じる。この問題自体は非常に面白く、ここから哲学は面白い!と思う人もきっといると思う。著者の読みではこの問題はウィトゲンシュタインが終生抱えていた問題だという。その読みも面白い。 ウィトゲンシュタインの哲学は「語りえず、示される」ものを雄弁に語りたくなる、そんな哲学だ。永井氏を惹きつけてやまないものもそんな一面にあるかもしれない。そして同氏の問題も「語りえない」問題だ。この本を読んでああすごい、と思える人は哲学が向いているかもしれない。そんな知的好奇心を強くくすぐる一冊。 |
小澤征爾 / マルタ・アルゲリッチ [DVD] |
オザワとアルゲリッチの掛け合いが素晴らしいです。 アルゲリッチの力強く魅力的な響きと、小澤征爾のアンサンブルに込められた哲学が絶妙に融合し、トータルとして、大変素晴らしい音楽が作り上げられています。是非一度聞いて見て下さい。 |
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